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トルコ大使館前にて、クルド人53人がトルコ政府に抗議 民間人デモの武力鎮圧を受け
トルコにおいて少数民族のクルド人とトルコ軍の武力衝突が続く中、日本在住のクルド人たちがトルコ大使館(神宮前2)に結集、2日深夜から3日朝にかけ、トルコ軍が関与したと伝えられる、少年を含む複数のクルド人殺害事件への抗議を行った。
抗議に参加したのは、埼玉県在住者を中心にした53名のクルド人。参加者の一人イマムさん(写真)によれば、2日夜、トルコ南東部の都市ディヤルバクルで8歳の少年を含む、複数のクルド人が殺害されたとの報がインターネット上に流れた。それを読んだイマムさんらクルド人たちは駐日トルコ大使館への抗議を決意、マスコミや一般市民の注目が集まる時間まで待つべきだとの一部仲間の制止を振り切り、神宮前にある同国大使館に押し寄せた。
抗議行動は深夜23時から翌朝9時まで続いた。現場に居合わせた原宿署によれば、クルド人の一団は特に大きな声で叫んだり通行人の邪魔になるなどの行為は無かったとのことで、今回の行動による検挙者は出なかった。イマムさんによれば、事前に「大声を出さない」「暴力に訴えない」「煙草に火をつけない」といった取り決めを確認しており、全員がそれに従ったという。
この抗議に対しトルコ大使館が門を開くことは無く、クルド人グループが用意した抗議文の受け取りも拒否したとのことだ。
イマムさんらが掴んだ情報によれば、トルコ南東部の都市ディヤルバクルで、3月21日から4月3日までの約2週間で14人のクルド人ゲリラが、トルコ政府による掃討作戦で殺された。28日このメンバーの葬儀をきっかけにトルコ各地で抗議デモが勃発。トルコ政府は事態の沈静化のため、軍による催涙ガス使用などの手段に出ているという。30日には民間人デモ隊と治安部隊間の衝突が激化し、イマムさんらの抗議のきっかけとなる8歳の少年ほかの死亡事件が発生した。さらに31日にはイスタンブールで、バス停付近に仕掛けられた爆弾が爆発し少なくとも1人が死亡、11人が負傷する事件が起きたが、これについてはその後クルド人ゲリラを名乗るグループにより、「ディヤルバクルでのクルド人殺害の報復」との犯行声明が出されている。
ディヤルバクルではほぼすべての商店が閉鎖されるなど「事実上の戒厳令状態」にあるとも言われ、警察などによると現在までに250人以上が重軽傷を負う泥沼の情勢となっているようだ。
〔参考〕トルコにおけるクルド人問題について
クルド人は世界に2500万人から3000万人いるといわれる、独自の国を持たないものとしては地上最大の民族。そのうち最も多い1500万人がトルコに居留しており、トルコ全人口のうち25%を占める。
トルコ政府は1923年の共和国建国以来、民族同化政策を敷いており、「クルド人」の存在自体を公式には否定、クルド人による母語の使用も禁じている。クルド人が存在しないのと同様、「クルド人問題」も存在しないというのが今日までのトルコの公式見解だが、現実にはトルコではオスマン帝国時代から今日まで、自治ないしは分離独立を求めるクルド人とトルコ人の紛争が絶えない。
イラク戦争勃発後、イラクに住むクルド人の問題がクローズアップされることが増えたが、最大の人口を抱えるトルコでのクルド人問題が日本で報道される機会は圧倒的に少ない。「深刻な国際問題はイラン、イラク、アフガンだけで起きているわけではない。石油が出ない国でも紛争はあるんです」とは、今回取材に答えてくれたイマムさんの言だ。
クルド人問題とは
(2006-04-04)
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