ヘッドラインニュース

ヤングハローワークの利用者ピークに 雇用の改善は本当か

ヤングハローワークの利用者ピークに 雇用の改善は本当か

 4月に入り、若年層の就職を支援する「ヤングハローワーク」(神南1=写真)では訪問者が年間を通じてピークとなっている。学校在学中に就職活動に失敗、あるいは活動自体しなかった若者たちが、卒業後のこの時期、一斉に職探しを始めるからだ。
 景気は平成14年以降ようやく回復に向かったが、採用に転じても即戦力以外は欲しがらない企業は相変わらず多い。まだ体力が戻り切らない会社にしてみれば、未経験者を一から育てている余裕はとてもないからだ。
 だが就職難が10年もの間続いた結果、就職市場では即戦力などという存在も、数えるほどしかいないのが現実。最近になり、一定の見習い期間を設けた上で未経験者の採用に踏み切る社も増え始めてはいるが、未経験者を雇うくらいなら採用なし、という企業もまだ珍しくない。
 企業と若者の間にある、職種に関するギャップも目立つ。企業が募集する職種の上位は「営業」か「販売」。それに対し若者の側は、「事務」、あるいは「クリエイティブ」志向が強い。前者は専門的なスキルを必要とされないイメージが持たれているからだが、現実には、社内コミュニケーションの上手な人しか必要とされない狭き門だ。後者に関しては募集している会社自体が圧倒的に少ない。
 若者にとっては不本意なこうした現実を示し、「夢を諦めさせる」ことも、ヤングハローワークの避けられない仕事だ。だが、これを受け入れられず、面接など最初の一歩を踏み出せないまま姿を見せなくなる若者は後を絶たない。
 ヤングハローワーク指導員のFさんは、最近の若年求職者の傾向として職業に関する知識・情報がほとんど身についておらず、働くということについて真剣に考えた経験も少ないことを挙げる。「小学校から大学までの現在の学校教育に、自分の将来の仕事について考えを巡らせたり、研究する面があまりに抜け落ちているのでは」というのが、日頃何人もの若者と面接するFさんの感想だ。
 とはいえ、20代のうちなら徐々に現実と折り合うだけの時間的猶予がある分、救いはある。Fさんが今特に懸念しているのは、最近になり30歳以上のヤングハローワーク利用者が急激に増えていることだ。
 求人は確かに増えた。だが、20代がたまたま「超就職氷河期」だったがためにチャンスを得られず、フリーターの経験しかないまま30代を迎えた求職者を、積極的に採りたがる企業は現実にはない。若者にしても、苦労して入った会社で、年下の上司に仕事を教わる可能性は常に頭に置いている。従ってよほど覚悟して踏ん切りをつけない限り、ズルズルとフリーターを続けてしまうことになる。
 「あと何年もフリーターを続けられないことは、彼らも分かっています。でも今のバイト先ならば年下の店長も気遣って「さん」付けで呼んでくれる。少なくとも生活費分なら、誇りを傷つけられることなく稼げるんです」(Fさん)
 巷では企業求人を「史上空前の売り手市場」とまで評する向きがある。だが、若者と企業の間にある溝は未だ残されたままだ。とりわけ、過去10年間社会が停滞したことによって、取り残された人々に刻まれた爪痕はあまりに深い。

(2006-04-18)

最新記事一覧

ヘッドラインニュース一覧

創刊にあたり

現実をみつめる冷静な目
原宿新聞編集長 佐藤靖博

www.harajukushinbun.jp

虫に書く

事案の真相に鋭いメスを
「巨悪は眠らせない」

www.harajukushinbun.jp