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注目の 「共謀罪」 について、青山学院大・新倉修教授と一問一答(1) 「日本は、同僚に密告される国になる」
犯罪を実行しなくても、話し合っただけで罪になるという「共謀罪」法案の国会審議が、今週、可決に向けヤマ場を迎えている。しかしここに来て同法案を、「個人の心の中にまで踏み込む法律」、「思想弾圧が狙いでは?戦前の治安維持法に匹敵する悪法だ」と批判する声がインターネット上を中心に相次いでおり、注目も日を追うごとに増している。
とはいっても大半の人が未だ馴染みがないまま、明日にも成立しようとしている「共謀罪」とは何なのか。政府の言うように、暴力団ともテロ組織とも無関係な一般人が巻き込まれる可能性は本当にないのか。これらの点を中心に、同法案に対し早くから反対を表明していた青山学院大学・新倉修教授(写真)に話を聞いた。
――― 共謀罪をめぐる議論の中で、警察による法の乱用を警戒する意見がある。実際にありうるだろうか。
「可能性はある。なぜなら共謀罪は作り出すのが極めて簡単だ。刑事が内偵捜査を行いある人物に接触したとする。刑事がその人物に架空の犯罪の計画を持ち掛け、賛同を得られればそれだけでも罪として成立する。特定の人物を狙い撃ちし、逮捕に足る証拠を作るのは今までとは比べ物にならないほど容易になる」
――― だが一般の人々の間では、「日本の警察がそこまで悪いことをするものだろうか?」と訝る声がある。また、暴力団や政治団体などを摘発するものであって、自分とは無関係な法律だと思っている人も多い。
「警察が善意の存在であるか否かは、実はあまり関係がない。共謀罪はその性格上、内部告発や密告を奨励しており、密告者だけ罪が軽くなるか無罪になる。すると、必ずその制度を悪用する人間が現れる」
――― スターリン時代の旧ソ連や文化大革命時の中国のように、身近な他人を陥れるための密告が多発するということか。
「そうだ。小泉政権下で作られた、この食うか食われるかの苛烈な競争社会では、(職場の同僚、競合相手の企業など)常に誰かが誰かを出し抜きたいと思っている。そんな社会でこの法律が施行されれば確実に悪用される。いつ誰に陥れられるか分からなくなり、四六時中疑心暗鬼になって職場の相談事を受けるのすら警戒が必要になる。そんなことになれば、今ある社会のあり方が根本から変わってしまう。何よりそのことがこの法案の問題点だ」
――― 与党によれば共謀罪が適用されるのは、「共謀に資する行為」があった場合に限るという。だが、「共謀に資する行為」とは、具体的に何を指すのか。
「4月28日の衆院予算委員会で野党の細川律夫氏(民主党)は、『預金の引き出しや、ホテルの予約など、日常生活でごく普通に行われる行為でも、(それが犯罪に関係していれば)『実行に資する行為』に当たるのか?』と質問した。これに対する与党代表・漆原良夫氏(公明党)の答弁は、『ありうる』と認めるものだった。
ある人物が殺人を犯す計画を立てたとして、殺害場所として使うホテルや、その費用の引き出しのみ、何も知らない第三者に依頼することは十分ありうることだ。その第三者が何も知らずに預金の引き出しを引き受け、後からその金の用途が殺人だったと知っても、どうやって証明できるのか?「そんな目的のためとは知らなかった」ということは、いくらでも起こりうること。政府の言い分は、そういう人に『知らない方が悪い』と言い放つようなものだ。法律の規定そのものがあまりに曖昧だ」
一問一答の後半は、この法案が提出された経緯と、本当の意図が何かについて、引き続き新倉教授に尋ねる。
「共謀罪」 について、青山学院大・新倉修教授と一問一答(2)「『大きな枠組』に入ることが目的だ」
(参考)
共謀罪―5つの質問―(自由法曹団 警察問題委員会)法務省 組織的な犯罪の共謀罪に関するQ&A(2006-05-10)
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