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特別養子縁組国際シンポジウム 開催

特別養子縁組国際シンポジウム 開催

産みの親のもとで育つことができない子どもが、施設ではなく個人の家庭で育つことを目的とした「特別養子縁組」を考える国際シンポジウムが、本日午後、港区の日本財団ビルで開催された。
シンポジウムには日本の専門家に加え、養子縁組大国のアメリカやイギリス、隣国韓国の第一人者らが参加した。

まず、日本の特別養子縁組の現状と課題について朝日新聞記者の後藤絵里さんが報告した。アメリカやイギリスでは、生みの親が何らかの事情で子どもを育てられない場合、子どもを施設に入所させるのではなく、親以外の大人が法や契約によって実の親子同様に永続的な家族になる「パーマネンシーケア」を国の児童福祉政策の主軸と位置づけている。しかし日本ではいまだ要保護児の9割が施設で暮らしているのが現状だ。日本で特別養子縁組みが広がらないのは、実親の親権が極めて強く親権者の承諾がない限り特別養子縁組ができないという事情や、これまで施設養護が主流だったため、行政の整備が追いついていないことなどが原因と考えられる。

英国養子縁組里親委託機関協会講師兼コンサルタントのクリス・クリストフィデスさんは、イギリスで養子縁組制度が導入された歴史的背景や法の変遷、養子縁組が行われる際の費用負担の実情などについて伝えた。日本ではそもそも特別養子縁組に対する公的な補助は一切なく、縁組みにかかる費用(一件あたり数十万〜200万円程度とされている)は主に養親が負担している。養子あっせんの多くが民間団体の活動に支えられているが、国からそうした団体への支援は基本的にない。一方イギリスでは、海外から養子を迎えるケース以外は原則的に養親に費用負担は発生せず、パーマネンシーケア推進の大きな力となっている。

アメリカの全国養子縁組協議会 公共政策・教育部長のミーガン・リンドセイさんは、子どもの脳の発達の観点からパーマネンシーケアの重要性を強調。施設では言語や情動など、基本的な子どもの脳の発達に必要な「特定の大人との親密な絆」が得られず、施設で育った子どもは将来的に大きなハンデを負うことになるという。さらにリンドセイさんは、養子縁組の習慣、文化を育てていく大切さを強調。「たとえば、『本当の親』と言う言葉は、養父母が生物学的な親より軽視されているような印象を与えかねない。代わりに生物学的な親、育ての親などと言い換える。こうした地道な努力も必要だ」。

また、首都東京大学助教の姜恩和さんは、韓国の養子縁組み事情を2011年8月に行われた養子縁組特例法の改正を中心に伝えた。韓国の養子制度は朝鮮戦争後の混乱期に始まった海外養子縁組が発端となっているため、養子縁組制度全体における海外養子縁組の比重が大きいというお国事情がある。このため、2011年の法改正には、海外養子縁組の当事者らの声が大きく反映された。当事者からは、「国に捨てられたと感じた」など、批判的な声が多かったという。また国境を越えた養子縁組は、子どもが成人した後の実親探しが困難になるなどの問題もあり、改正後は国内養子縁組を海外養子縁組より優先すること等が条文に明記された。

登壇者が一様に強調していたのは、保護を要する子どものニーズは多様であり、画一的でない柔軟できめ細やかななサポートが必要である事、子どもの発達のできるだけ早い段階で安定した家庭環境を提供することの大切さだ。児童虐待の悲惨な事例が後を絶たない日本でも迅速な制度整備が求められている。(根津)(2013-12-15)

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