原宿新聞

美容外科医長女誘拐事件、13時間の攻防

　渋谷区神南の美容外科医・池田優子さん（41）の長女・果菜子さん（21＝明治学院大学経済学部4年生）が、26日午後0時25分頃、渋谷区の路上で誘拐される事件が発生した。身代金3億円を要求する犯人グループに対し、捜査に当たった警視庁捜査1課と渋谷署ではこの日のうちにその居場所を特定。深夜には容疑者3人を逮捕し、果菜子さんも無事保護した。早期解決の鍵となったのは、目撃者の詳細な記憶と被害者・果菜子さんの携帯から発信された電波だった。
　調べによれば、果菜子さんは同時刻、渋谷区鉢山町のバス停付近に停車していたシルバーのワゴン車の中から、見知らぬ男に「バスは来ないから乗りな」と声を掛けられた。果菜子さんが「いいです」と立ち去ろうとしたところ、男は果菜子さんを無理やり車に押し込み、そのまま逃走した。だが偶然この一部始終を目撃していた人物が、ワゴン車のナンバーも含め状況を正確に記憶、すぐに近くの交番に駆け込み通報した。
　男は果菜子さんを連れ去った約2分後に、果菜子さんの携帯を奪って母親・優子さんに電話。「優子さんの技量で決まりますよ。警察に言えば、すぐに殺しますよ」と脅迫した。
　さらに午後0時56分頃、男は再び優子さんの携帯に電話、身代金として3億円を支払うよう要求した。その後もこの犯人と優子さんの間では、十数回のやりとりが果菜子さんの携帯を介して為された。
　一方、警視庁捜査一課と渋谷署からなる特別捜査本部は果菜子さんの携帯電波をキャッチ。犯行に用いられたのが公衆電話や（使用電話を特定しにくい）プリペイド式携帯ではなかったことが逆探知を早め、車が川崎市内にあることを掴んでいた。さらに、目撃情報にあった車のナンバーから、同日５時頃川崎市中原区丸子橋付近で発見のワゴン車を犯人らの車と特定。追尾した結果、27日深夜0時42分、事件に関与したと見られる二人の男の身柄を確保（その後逮捕）した。さらに同1時25分には付近のマンション一室に監禁されていた果菜子さんを無事保護し、果菜子さんを拘束していた３人目の男も逮捕した。
　逮捕されたのは、いずれも職業不詳で、横浜市鶴見区小野町１０の崔基浩（５４）、中国籍の住所不定、李勇（２９）、岩手県矢巾町白沢６の伊藤金男（４９）の３容疑者。現在警視庁では、犯行の動機などについてさらに詳しい捜査を進めている。
　果菜子さんの母・優子さんは、美容外科「池田ゆう子クリニック」（渋谷区神南１丁目＝写真）を開業する医師。脂肪注入による豊胸手術の専門家として女性たちから圧倒的な人気を集めテレビ、雑誌などにも多数登場、「年収12億円を稼ぐ」などと紹介されていた。果菜子さん自身も大学生ながら母親のブランドの化粧品会社社長を務めており、しばしばメディアにも登場していた。



（2006-06-27）