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芸術を進化させる抑圧、という皮肉 「ポーランド写真の100年展」

芸術を進化させる抑圧、という皮肉 「ポーランド写真の100年展」

 渋谷区立松濤美術館では、現在「ポーランド国立ウッチ美術館所蔵 ポーランド写真の100年展」を開催中だ。
 ドイツと旧ソ連という二つの大国に挟まれ、常に政治的不安定に晒されてきた東欧の小国・ポーランド。第1次大戦後はこの両国により国土を分割、第2次大戦ではナチスの侵攻により一時消滅を余儀なくされた。この時期、スロバキアとの国境近いオシフィエンチム市はドイツ語の「アウシュビッツ」に改名されたが、20世紀最大の悲劇がここで行われたことは、今や世界中が知るところだ。さらにソ連の傘下となった戦後も、東西冷戦の混乱に巻き込まれるなど、同国の近代史はあまりに過酷なものだった。
 しかしそれら社会の混乱は、結果的に芸術分野に限り絶大な発展をポーランドにもたらしたことは、今展の写真約200点が証明している。
 ナチス・ドイツ、共産党と支配者が移り変わる中で、西側諸国のような自由な言論は望むべくもなかったかつてのポーランド国民。だがそうした環境下で(大半がアマチュアだった)写真家たちは、作品の中に社会への無言のメッセージを込めることで、自分たちの表現を先鋭化させていく。ホロコーストの時代、共産党一党独裁の時代を通じ一貫して窺えるのは、最小限の表現のうちに込められた、写真家たちの悲痛な感情だ。
 そのひとつである、クシシュトフ・チホシュの「収容者」(1990年代撮影=トップページの「フォトニュース」にて拡大画像参照可)は、共産党政権時代に撮られた家族写真などを繋ぎ合わせたもの。何人分かの空白の人影が目に付くが、これらはいずれも、かつて政府から強制収用された人々だという。1989年以降民主化に向かったポーランドだが、この国の人々が経験した重い現実が、決して遠い昔のことではない、ごく生々しいものとして感じられる200点だ。8月27日まで。写真のほか映像作品数点も展示。



住所:渋谷区松濤2-14-14
TEL: 03- 3465-9421
開館時間:午前9時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:8月7日、14日、21日(いずれも月曜日)
入館料:一般300円(240円)、小中学生100円(80円)( )内は団体10名以上
60歳以上の方、障害のある方(付き添い1名を含む)は入館無料

8月4日(金)午後2時より、担当学芸員によるギャラリートーク
8月5日(土)午後2時より、写真家・塚原拓哉氏を招いて講演会

松濤美術館




(2006-08-01)

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