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今年度を代表するカルト映画 『悪魔とダニエル・ジョンストン』

今年度を代表するカルト映画 『悪魔とダニエル・ジョンストン』

 宇田川町のミニシアター「ライズX」(渋谷区宇田川町)にて、先週末より今年度を代表する「カルト映画」が公開されている。 
 ジェフ・フォイヤージーグ監督の『悪魔とダニエル・ジョンストン』は、精神を病みながら唯一無二の音楽世界を作り上げたミュージシャンの半生を追ったドキュメンタリー。
 カリフォルニア州サクラメントに生まれたダニエル・ジョンストン(1961〜)は、幼少時から音楽や絵画で才能を発揮。しかし保守的なキリスト教原理主義者の両親にとって、彼の愛するロックンロールは邪悪そのもの。複雑な家庭環境で認められることなく育つうち、ジョンストンはやがて地下室に引きこもるようになり、精神も病んでいく。
 だが、家を出て自作作自演の曲を吹き込んだテープを配り歩くうち、ジョンストンの才能は音楽業界の知るところに。おりしもMTV全盛の80年代、時代の追い風を受けたジョンストンは、ニルヴァーナのカート・コバーン、ソニック・ユースのサーストン・ムーアらのアイドルにまで上り詰める。
 記録魔だったジョンストンは、自身で撮影した大量のプライベートフィルムを残しているが、映画はそれのほかに関係者へのインタビューなどを編集し構成。人気に火がつきテープの注文が殺到するが、ダビングという手段を知らないせいで注文の数だけ何度も同じ曲を吹き込んだり、あるいは父親が操縦しているセスナのキーを飛行中に引き抜いてしまい墜落。奇跡的に木に引っかかって助かったにもかかわらず、危うく殺しかけた父親を前にけろっとしていたといった、唖然とするほかない逸話の数々が続く。
 本編撮影当時のジョンストンは42歳。画面に映る風体は年相応にくたびれている彼だが、いざ歌い出せばその声は、彼が精神的成長を止めた12歳の少年の頃と全く変わらず、澄んだままだ。日常のものとして紹介される彼のエピソードが常軌を逸していれば逸しているほど、彼の音楽はこの世ならぬ美しさを湛えているように聴こえて来る。

公式サイト
シネマライズ
(2006-10-02)

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