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元日銀マンが語る中央銀行の内幕(2) 「日銀インサイダー」著者・本吉正雄氏
公式には、日本銀行は民間銀行への行政指導を「しておらず」、「その権限もない」ことになっている。接待疑惑が囁かれた時も、接待の事実を否定する日銀の根拠は「接待されるほどの権限がない」だった。だが蓋を開けてみれば、民間銀行による数々の接待が明らかになったのは、記憶にも新しいところだ。
「接待があったのは、要は行政指導があったことの裏付。なんの見返りも期待せず、民間企業が公務員を接待することはない」(本吉氏)
日銀には確かに法律で認められた強制指導力は無い。だが本吉氏によれば、日銀は法律などに頼らずとも、市中銀行を事実上の支配下に置ける強大なシステムを手中に収めている。その正体が、「窓口指導」と呼ばれる非公式の行政指導だ。
通常、日銀と市中銀行の担当者同士のやりとりは、「最近、中小企業向けの貸出、増えて(減って)ますね」「リスクとか考えると、大変ですよね」といった、非直接的で微妙な言い回しにより行われる。もちろん日銀はこれらの言葉で銀行の担当者にプレッシャーを掛けるのだが、法律上、銀行はこれに従う義務はない。だが、現実には従わないということはまずありえない。それがどのような恐ろしい結果を招くか、銀行側もよくよく分かっているからだ。
日銀は朝9時から午後3時にマーケットが閉まるまでの間、市場で1日に動くカネの総額をあらかじめ計算している。カネとモノのバランスが崩れインフレを招かないよう、モノとの均衡を見積もった額ちょうどをマーケットに放出するのだ。
仮に、全国に銀行が10行だけあり、日銀は通常その10行に総額100億円(/日)を10億円ずつ均等に放出すると仮定する。この10行の中に日銀の指導に従わなかった銀行があっても、そこに制裁を加えるのはごく簡単だ。通常10億円を供給しているその銀行に、その日一日、1億円しか供給しなければいい(残りの9億円は他の銀行に廻す)。たった一日だが、預金者からの預金の大半を融資に回している銀行では、日銀からの10億円なしに決済を行うのは不可能だ。つまりその銀行は倒産せざるを得なくなり、午後には日銀の担当者の元に泣き付きに訪れる。そして日銀の口利きで他行から資金を廻してもらうのと引き換えに、今後指導に背かないと誓わされるのだ。
このような超法規的な圧力が本当に存在するのか。その点を確かめると、本吉氏は証言した。
「私が日銀時代所属していたのは広報部。行政指導は日銀では課長補佐級の担当だが、当時、彼らが民間銀行の重役クラスを指導中に怒鳴りつけたといった話が、頻繁に私のところに入ってきた。その場合『もしマスコミから問い合わせがあっても、知らぬ存ぜぬで通すように』とのお達しが下るのだが、『承知しました。ところで、それは事実と考えていいのですか?』と訊ねると、彼らの答えは『事実だ』というものだった」
(3)に続く
「日銀インサイダー」
(2006-10-23)
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