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「いじめ学」内藤朝雄氏に聞く、問題の深層と対策(2)
(前半から続く)
―――具体的にはどのようなことか?
「学級制度の廃止だ。この制度自体は他の国にもあるものだが、日本ほど人間関係がタイトで、一つの空間に同じ集団が朝から夕方まで押し込められる例は他にはない」
「あなたの子どもがクラスの誰かから人としての尊厳を踏みにじられるような行為を受けたとする。だが、こうした閉ざされた人間関係にあってはその子は無理に心を屈し、嫌われない努力をするほかない。『迫害してくる相手とは適度に距離を置く』という、一般社会では誰もがやっている心の調節を、子どもにだけ許さないのが現在の学級制度だ」
「本来、机を並べる相手は授業ごとに違っていていいし、いつもの教室で決まった相手と食べる給食ではなく、カフェテリアで気の合う相手と食事をするスタイルでもいいはずだ。部活動にしても学校に頼る必要はない。ドイツなどが典型だが、子供たちはスポーツや文化活動も学校とは別の地域クラブに所属して行い、そのたびに人間関係のバリエーションを増やしている。これに対しクラスという枠に固定され続け、ほとんどその範囲内でしか人間関係を選べないのが日本の子どもたちの現状だ」
「たまたま同じクラスに振り分けられたというだけで課せられてしまった、理不尽な人間関係から子どもを開放する必要がある。それぞれの子が、自分にとってより適切な人間関係を選ぶだけの選択の幅があれば、自殺にまで追い詰められるような危険な人間関係に甘んじる必要はなくなる」
―――これまでもいじめの問題が何度も取り沙汰されながら、学級制度という仕組みを動かすことに目が向かなかったのは、なぜだろうか?
「学校という場所を必要以上に神聖視しすぎた結果だろう。市民社会において人命以上に尊重されるべきものはないはずだが、ある種の『教育系』の人々のあいだで、人間の尊厳や人命以上に、『教育』そのものが重要な価値になってしまっている。だから暴力に対しては警察に任せる、迫害の加害者には損害賠償をするといった、市民社会では当然のルールが学校に限って適用されないまま良しとされてしまう。だがそのことにより、いじめの温床となる閉鎖空間はますます強固に維持されていく」
―――いじめによる自殺や、自殺予告が毎日連鎖的に起こっている。渋谷区も今やその当事者だが、このような状況をどう考えるか?
「教育が神聖視されるあまり、『加害者を罰する』という当たり前の仕組みができていないためだ。そのような状況では、いじめられる者のなけなしのプライドは自殺という方法でしか訴えの形を取れない。実際自殺する子の多くは、加害者を司直の手に引き渡すことを思いもしないまま死を選んでいる。
だが、いじめを放置した担任教師が厳正に処罰され、加害少年に責任を取らせる制度が確立されたならば子供たちのエネルギーは自殺には向かない。生きて彼らを告発することに向かうはずだ」
■内藤朝雄氏の著書(共著を含む)
「いじめの社会理論―その生態学的秩序の生成と解体」
「学校が自由になる日」
「ニートって言うな!」
(2006-11-14)
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