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シリーズ「食」第1回　私達は何を食べているのか��

シリーズ「食」第1回　私達は何を食べているのか��

「納豆ダイエット」「アミノ酸」「血液サラサラ」「有機野菜」「中国産」「メタミドホス」―――。　　　
　いま、私たちの食卓に日々供給される食品への信頼が急速に揺らぐ一方、過去に類を見ないほど膨大な、食に関する情報が飛び交っている。多くの消費者はその中で何が正しいのか分からず、ただ戸惑い、立ちすくむばかりだ。
　それは裏を返せば、自分の健康を守るために自分自身で情報を集め、自分で考えることが、今ほど必要とされる時代もないということでもある。
　原宿新聞では、情報の氾濫の中にあって消費者にひとつの指針を示すことを目指し、今回より不定期連載シリーズ「食」を掲載することとなった。
　第1回ではイントロダクションとして、ある「自然野菜」販売業者へのインタビューを実施。結果、先入観や固定観念に囚われているかぎり、「食の指針」など見つけ出せないであろうことを、初回にして思い知らされることになった。



　親がどんなに苦労して食べさせようとしても、頑として食べたがらない筋金入りに野菜ぎらいの子ども。この子にある会社から取り寄せた野菜を与えてみたところ、嘘のように平らげてしまった―――。「食」をテーマに取材を始めるに当たり、知人からそんな例があったと聞きつけ、世田谷区にある、食料品個人宅配を行う有限会社「ナチュラル・ハーモニー」を訪ねた。
　だが、同社代表の河名秀郎氏（＝写真）に「実際にそういう例が？」と尋ねるやいなや苦笑いされてしまった。聞けば、「そんな話なら何も子どもに限らず、大人にも山ほどあるんだけどなあ（笑）」という。

◆野菜が寝たきりを防いだ

「『生まれてこのかた30年以上、ニンジンだけはどうしても食べられなかった』というような人を、生産地まで連れて行くことがよくあるんですよ。そこで獲れたニンジンを『食べてみろ』と勧めると、最初はやはり皆顔をしかめる。でも口に入れてみたとたん、『アレ？』と信じられないような顔をする。そんな光景を、これまで何度も見てきました」。
　不思議なエピソードはそれだけにとどまらない。重い病気にかかり、身体の衰弱が進行した人には、極度の食欲不振に陥り、おかゆすら喉を通らなくなることがままある。普通だったらこのまま点滴を打ち始めさらに衰弱が進んでしまうところだが、そんな患者に河名氏が仕入れる野菜を与えると、驚くほどスムーズに喉を通ってしまうというのだ。
　そのナチュラル・ハーモニーの野菜（カブ）を、験しに実際に食べさせてもらった。口にしてみると、たしかに旨い。普段使っている「旨い」という言葉の意味を超え、充足感が体の隅々にまで行き渡るようにも感じる。だが、この野菜が持っているという、生来の野菜嫌いを解消したり、病人に食欲を取り戻させるほどの力の根源となると、想像が及ばなかった。
「一体、どんな特別な農法でこれを？」と思ったが、話を聞いているうち、次第にそれが見当はずれであることが分かってきた。たしかにユニークな農法ではあるが、「何かをした」からではなく、むしろ「余計なことを何もしなかった」からこそ、そのカブは作れたようなのだ。

（続く）


（2008-05-16）

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