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シリーズ「食」 第三回 私達は何を食べているのか(3)
「自然栽培」の研究者であり、実践者でもある河名秀郎氏の話は、やがて現代農業の基本的体制を、揺さぶりかねないところまで向かい始める。
「有機農家がよく、自分の畑で取れた虫に食われた野菜を、『虫が食べに来るほど旨い』みたいなことを言うでしょう?あれ、私に言わせれば嘘なんですよ」という河名氏。「どういうことか?」とこちらが訊ねると、問題の核心がやはり窒素にあることを、分かりやすく説明してくれた。
「なぜかというと―――うちが提携している生産者たちは、皆そのことを経験として知っていますが―――農作物と、地中の窒素の量が適切なバランスに保たれている限り、虫は、野菜に寄り付くことはないんです」。
「ところが、そのバランスを逸脱するほど多量の窒素が地中に添加されると、作物の根はその窒素を吸い上げ、やがて葉に溜める。それを虫が食べに集まってくる。つまり虫が食べているのは、人為的な肥料投下で増えすぎた、自然界から見て余分な窒素だということです。虫にしても、ただ無意味な害虫としてそこに存在しているわけじゃないんですね」。
つまり現代の農業は、人が農地に窒素をふんだんに含んだ肥料を撒き、それを目当てにやってきた虫や病原菌を農薬を使って殺す。だが結果として人間が、その農薬の害によって苦しめられる。そうした悪循環に陥っているというのである。
「肥料を使い続けている限り、人間は農薬と決別することはできません」。
河名氏はこう断言する。
農薬と肥料の相関関係
ここに一枚のグラフ(=図)がある。グラフ中の、曲線Aが肥料の出荷量、曲線Bが農薬の出荷量だ。それぞれ「肥料要覧」「農薬要覧」という別々の資料を出典とした数値だが、それぞれを記録した曲線が、図のように、ほぼ重なりあっているのが見て取れる。つまり河名氏の説を裏付けるかのように、肥料の使用量(曲線A)増加に比例し、農薬の使用量(曲線B)も増えているとも見えるのである。
河名氏によれば、この肥料と農薬の因果関係は、「現代の農学がまだ気が付くことができていない」分野。だがいずれにしてもこの説は、専門的な検証を受けるだけの価値はある。そのことだけは、どうやら間違いなさそうだ。
(つづく)
(2008-07-16)
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