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シリーズ「食」第2部 残留農薬、「危険」の正体(前篇)11/16/08
食べ物や健康をめぐり膨大な情報が飛び交う中にあって、ひとつの指針を見つけることを目指す、原宿新聞の「シリーズ『食』」。その第一部では、農薬も肥料も使わない「自然農業」の探究者に取材した。
そこで知ることができたのは、農薬を使わない野菜にまつわる、いくつもの驚くべき例。筋金入りの野菜嫌いだった子どもが、自然野菜を与えたところ嘘のように平らげてしまった逸話に始まり、衰弱し食事も取れなくなった病人が、同じく自然野菜により食欲を取り戻し、回復に至ることすらある、という事実だった。
だがこれは裏を返せば、我々が日常食べている「ふつうの」野菜が、病人や子どもにとっては、食べるのがはばか憚られるほどに危険であることを意味しているのではないのか?野菜が本来的に持つ力に驚く一方で、今度はそのことが、改めて気になってきた―――。
■「基準値以下」なら安全か?
アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー性疾患、化学物質過敏症などの症状を、一切の薬を処方せずに治療する「臨床環境医」がいると聞き、神奈川県藤沢市に足を運んだ。
話を聞いたのは、「ホスメック・クリニック」の院長・三好基晴医師。同クリニックは、先のような症状を訴えながら、他の医師による診察では改善を見なかった患者たちが、はるばる北海道や福岡からもやってくるというところだ。
アレルギー性疾患との関連性が指摘されるようになって久しい、農産物の残留農薬。この危険性の度合いについて改めて尋ねたみたところ、三好氏からは次のような答えが返ってきた。
「最近、中国など海外から輸入した野菜に、基準値以上の残留農薬が検出されるということがあってずいぶんと騒がれましたね。これに対して私は言いたいんです。『じゃあ基準値以内だったら安全なんですか?』と」。(三好氏)
三好氏によれば、基準値より上か下かを問題にした一連の騒動からは、日本において農薬という物質の本質がまったく理解されていない現実が、如実に浮び上がっていると言う。
「農薬の基準値は、ADI(一日摂取許容量)に左右されます。これは、農薬を含め何か特定の物質を一生涯、毎日摂取したと仮定して、ヒトの健康に影響が生じない量を体重一キログラムあたりで示したものです」。
ADIは、動物実験によって測定される。つまり、日本で販売されている農薬の急性毒性、慢性毒性、発がん性、催畸形性などは、動物に投与した上で試験されているということ。そう聞けば、つい安心してしまいたくなるところだが、三好氏は、これをにべもなく否定する。
「動物実験で最大無作用量だったからといって、その農薬が本当に無害であるという保障にはなりません。農薬を投与された動物が、実験のせいで頭が痛くなったり、気持ちがイライラしたり、吐き気を催していたとしても、彼らにはそれを訴えるすべがないからです」。
また、動物実験で観察できる病気にしても、「実はごく限られている」と三好氏は語る。
「人間が発病するかなりの数の病気、たとえばアルツハイマー病、うつ病、化学物質過敏症などについては、動物実験で確認するのは極めて困難です」。
(後篇に続く)
(2008-11-16)
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