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シリーズ食第2部 残留農薬、「危険」の正体(後編)
平成16年に厚生労働省が発表した「食品中の残留農薬検査結果」によれば、検査を実施した約53万件のサンプルのうち、農薬が検出されたのは約2600件。検出率はわずか0.5%だ。この結果を受け同報告では、「わが国で流通している農産物における残留農薬のレベルは、極めて低いものと判断される」と結論付けている。
■ 厚労省検査のまやかし
だが、残留農薬や食品添加物による健康被害を、臨床的に治療、研究する三好基晴氏(ホスメック・クリニック院長)は、この統計の取り方には一種のまやかしがあると説く。
その理由は、この調査において「約53万のサンプル」とされているのが、実は農産物ではなく、農薬の方であることだ。
つまりこの調査報告は、「53万個の農産物をチェックした結果、その中で農薬が検出されたものが2600個しかなかった」のではなく、約53万種類の「農薬」について調査したところ、見つかった農薬が2600だったということを示すものだというのである。
ところがこれを、農産物の方をサンプルにして検査してみると、「まったく別の結果が見えてくる」と、三好氏は語る。
「農産物の個別の残留農薬検出率は、東京都健康安全センターが調べています。同センターが平成14年4月から同15年3月にかけて東京都内で購入した農産物の残留農薬調査結果では、キュウリ、トマト、ジャガイモなど54個の国産野菜のうち14個から残留農薬が検出されました。率にすると24%です。
また、イチゴ、みかん、リンゴ、ナシなどの52個の国産果物についても検査したところ、検出率はなんと54%になりました」。
■ 農薬は変化する
三好氏によれば、厚労省検査における問題点はそれだけではない。というのも同省の検査では、農薬の「有効成分」、すなわち除草や防虫といった、各農薬の本来の目的に沿った成分以外は検査の対象になっていないからだ(したがって厚労省は、有効成分だけを検査しただけの農薬に「安全」とのお墨付きを与えていることになる)。
だが、実際に使用されている農薬には、「有効成分」以外にも、有機溶剤、乳化剤、展着剤、着色剤など多くの添加剤、すなわち化学物質が使用されている。また、農薬の有効成分は、熱や光、あるいは微生物の作用で、さまざまな別の物質へと変化するものでもある。
農薬はこうした化学反応を起こすことで、さらに危険な存在へと変わりうるのだが、「そうした視点が、功労賞の検査からは、すっぽりと抜け落ちている」というのである。
その典型的な例が、実は中国産の「毒入り餃子」で一躍名を知られるようになったメタミドホスだ。日本では登録されていないこの農薬は、製造も販売もされていないために国産の農産物には使われていない、というのが一連の報道を通じて私たちも聞かされているところだ。だが三好氏によれば、これは完全な事実誤認だという。
「商品名『オルトラン』で売られる『アセフェート』という農薬があります。農家に限らず、家庭菜園用として、ホームセンターなどでも容易く買えるものです。ところがこのアセフェート、実は散布された後の環境や農産物の残留農薬として体内に取り込まれた後、アセフェートの三〇倍の毒性を持つメタミドホスに変化する性質をもっているのです。
「したがって、アセフェートを散布した農産物を検査して残留農薬が基準値内だったとしても、メタミドホスの残留農薬を検査してみれば、検出される可能性がある。現に平成一六年度の農林水産省調査では、国産農産物の残留農薬検査で、キャベツ、白菜、レタスなどからメタミドホスが22件検出されています」。
毒入り餃子事件をセンセーショナルに取り上げたマスコミは、果たしてこうした事実を報道していただろうか?
■「何も分からない」ことの怖さ
三好氏は、農薬や添加物の本質が、日本においてはあまりに理解されていないことに危機感を募らせる。
「実際のところ、ほとんどの残留農薬は短期的に見ればさほど害はないということは言えるでしょう。しかし問題は、長期的、日常的に残留農薬を摂取した場合、どれほど深刻な害があるかなどということは、はっきり言えば誰にも分らない。なぜならなら、たとえ認可された物質同士であっても、その組み合わせはほとんど無限にあり、その化学反応のバリエーションすべてを把握することなど、厚生労働省も含め誰にもできないからです。
『分からない』ことほど怖いことはありません。そのことを消費者も厚労省も、もっと強く認識すべきでしょう」。
(第二部終わり)
(2008-11-26)
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