特集/コラム
イラストからメディアミックスの新しい文化へ Jeffrey Fulvimariさん(イラストレーター、アーチスト)
「彼の作品を見ない日はない」と表現されるほど、世界的に活躍しているイラストレーターだが、それにとどまらない。絵に加えて音楽、映画などもミックスした“ニューメディア”を駆使し、これまでの集大成ともいうべき「新しい文化」をめざす。
「日本は私の人生を変えてくれたファンが数多くいてくれる“第3の故郷”」といい、年に1回は来日する。今年は12月上旬、思い出多い渋谷パルコでのイラストレーション展に合わせて来日。ライブペインティング&サイン会のほか、今回は初めてジェフリー本人が、イラストレーターを目指す人のポートフォリオを批評する“ポートフォリオリビュー”を開催して好評を博した。
ここで強調したのは、「イラストは描くだけでなく、認められ、使ってもらわないと、イラストではない」ということ。日本人はアメリカ人に比べておとなしく、「もっとアンビシャス、アグレッシブにアピールしていかないと」という思いを、一生懸命に伝えた。ひとり5分、全部で10人のはずが、おかげで2時間を超えたしまった。
若いころからの苦労が、その背景にある。大学は、学費無料の有力校、クーパー・ユニオンでコンセプシャル・アートを専攻した。「卒業しただけで、すごい履歴になる」という有力校だけに、だれでも入学したがるし、金持ちの子もいる。その金持ちの子たちの生活ぶりに呆れて、「あえて、彼らが一番下に見て、笑い物にしているイラストの道を選んだ」という。
とはいえ7、8年は、生活は楽ではなく、模索が続いた。ウエイター、各種アシスタント、ギャラリー勤務、スタイリストなど、何でもやった。そして、スラリとした長身・美貌を活かしてファッションモデルも経験。このとき出合ったカメラマンが絵をみて、「仕事にすれば」とアドバイス、出版社を回ったことが一大転機となった。
トップイラストレーターとなった今でも、「あの時代に戻りたくない」というハングリー精神が、強烈なバネとなって猛烈な勢いで創作へと駆り立てている。
「仕事が続いて、好きな歌がやれなかった」という思いが今度は、音楽への夢を呼び覚まし、作詞・作曲・歌とすべてこなして、今年はすでに80曲以上をレコーディング。「メディアミックスで、自分が地球に残す最後の仕事かもしれない」と、思い入れは強い。
ジェフリー・フルビマーリ 1962年米国オハイオ州アクロン生まれ。1986年ニューヨークのクーパー・ユニオンで写真、ビデオ、コンセプシャルアル・アートを専攻して学士号を取得、卒業。
1993年インタビューマガジンの仕事をキッカケに、イラストレーターとしての経歴をスタート。日本では、1998年に渋谷のパルコギャラリーで開催された展覧会を契機に、本格的にキャリアをスタートさせ、1999年からは革小物(フカシロ)、タオル製品・インナーウエア(内野)や陶器〈ニッコー)などでライセンスビジネスも。
「集中力を高め、猛烈なスピードで多作」が持ち味だが、リフレッシュ法は音楽、そして日本では温泉。日本食とイタリア料理を好み、花は「桜がいちばん好き」という。
哲学は「音楽が僕の魂だ」。音楽を原点に、「絵を描くだけでなく、映画、音楽などすべてを駆使した“ニューメディア”でのアーティティックな表現」を目指す。自ら作詞、作曲、そして歌うメディアミックスのアルバムも、最後の編集作業に入っており、来春には新発売の予定だ。アメリカだけでなく、「マルチメディアのパフォーマンスを、日本でもやりたい」。