特集/コラム
ロイヤルホスト跡地に長蛇の列 低価格の北欧雑貨が人気
東京メトロの表参道駅から徒歩2分。ロイヤルホスト跡地に、若者や女性客が行列するガラス張りの店舗がある。今年10月にオープンした「フライング タイガー コペンハーゲン」(Flying Tiger Copenhagen)だ。
1000人以上が並んだオープンから1か月半、現在も10時から配布される整理券を求めて9時頃には人々が集まり始める。開店は11時。警備員が4人体制で路上に溢れる来店者に声を上げる。「家を出たのは7時前、千葉から来ました」と話すのは、先頭に並ぶ河田洋子さん(51)。「以前、昼過ぎに来たら16時入場の整理券しか手に入らなかったので、今日は早起きしました。」
「フライング タイガー コペンハーゲン」は、デンマーク・コペンハーゲンで生まれたライフスタイル雑貨ストア。カラフルでユニークな北欧デザインの商品が低価格で購入できるとテレビや雑誌などで話題となり、老若男女を問わず連日多くの客が訪れる。
人気の理由は、すべての商品が2000円以下、平均単価200~400円という低価格帯にある。また、豊富なアイテム数も魅力の一つ。「ホーム」や「キッチン」、「オフィス」などのライフスタイルを網羅した16カテゴリー、1500種類以上の商品が店頭に並ぶ。作り切り・売り切りでラインナップが変化し、来店の度に新商品を手にすることができる。年間の総アイテム数は7500種類。さらに、約450平方メートルの店内を、入口から出口まで一本の導線で結んだ「ワンウェイ・ショッピングスタイル」も評判。歩みを進めるにつれ、北欧ワールドへ気づかぬうちに引き込まれていくと、来店客を飽きさせない。
1995年にデンマーク・コペンハーゲンに生まれた同店。2001年にアイスランド、2005年にロンドンに進出。現在では、ヨーロッパを中心とする19ヵ国で260店舗以上を展開する。アジア初となった日本進出については、Zebra A/Sとサザビーリーグが契約を締結。2011年7月の大阪に続き、今年10月2日に表参道の旗艦店がオープンした。
「フライング タイガー コペンハーゲン」という名称について、「タイガー」に中国をイメージしがちだが、その由来は同店が10クローネ(約180円)の均一ショップとしてスタートしたことにある。デンマークでは10クローネを【ティア】と発音し、Tiger(虎)も同発音。この2つをかけて、「Tiger」のスペルが採用された。さらにグローバル展開が進むにつれ、より多くの人々に愛していただきたいという願いを込めて「フライング」を冠に付け、現在の名称となった。
「可愛くて安いので、自分、家族、友人へと、つい買い過ぎてしまって。久しぶりに楽しい買い物ができました」と、ニコニコと袋を抱える大野木聡子さん(34)。北欧ワールドを堪能した来店客の笑顔は、「フライング」に込めた願いが成就している証拠だ。
その一方で、路上に人が溢れる現実もある。整理券で時間差入場を促し、警備員を配置する同店は、行列を放置する他の人気店に比べ、積極的に問題解決に努めている。それでも通行車両との接触事故や近隣住民への迷惑となる可能性は否めない。人気と共に高まる来店者の数にどう対処するか、同店に限らず、人気店が抱える大きな課題である。
(市川)