特集/コラム
原宿瑞穂、仏女優も来店した大福の名店 「日本人であることを追求したら、とても国際的になった」
赤えんどう豆を練り込んだつきたてのもちで、あんこをくるんだお菓子・豆大福。表参道から、キャットストリートを入った先に、東京にある豆大福の名店のひとつ「瑞穂」がある。昼過ぎには売り切れてしまうまぼろしの一品を求め、過去にはフランス人女優のカトリーヌ・ドヌーブもお忍びで訪れたという。
至福の味を守るのは、大橋正文さん(64)。豆大福(写真)に使うもち米は、粘りとこしが強い宮城県産のみやこがねを使用。ふっくらとつき上がったもちに、北海道富良野産の赤えんどう豆がごろごろと練り込まれている。あんこは同じく北海道の小豆を使ったこしあん。上品な甘さで、ついもう一つ、と手が伸びてしまうおいしさだ。
原宿で生まれ育った大橋さん。大学は横浜国立大学に進学した。しかし入学した約40年前は学生運動が盛んなころで、休講が続いた。大人たちと対峙する同世代の仲間を見て、「自分を裏切らない人生は何か」と問い、老舗ホテルの洗い場でアルバイトをしていたこともあり「食」への興味を深めたという。
「ビーフシチュー、フルーツポンチ。目新しいものは何でも食べていました。でもそのうちに飽きてしまって、洋よりも和だって思っていたときに、虎ノ門にある大福屋『岡埜栄泉』の息子と知り合ったんです。『オレの名刺代わりだよ』ってもらった大福がおいしくて、感動して。大学を出た後、10年間修行をさせてもらいました」。
創業は1981年。開業時は、同地で洋品店を開いていた父に店の半分を間借りして営業していた。洋品店をたたんだいまは、店舗と工場が直結。商品を販売する横で小豆や米を炊き、できたて、作り立てを提供する。大きな宣伝は行っていないが、口コミで評判が広がり、いまでは国内はもちろん、アジアや欧州からも客が足を運ぶという。
「僕が最初に食べたときに感動した気持ちを、食べて下さった方に伝えたいと思っています。あんこはヘルシーだからと海外から来店して下さる方も多く、過去にはカトリーヌ・ドヌーブさんがいらしたことがあって、とても驚きました」。
この日最後の大福が売り切れたころ、早くも明日の仕込みが始まった。話をしながらも、水加減調整のため鍋から目が離せない。
「僕は、日本人であることをとても意識し、誇りに思っています。それは豆大福にも込めていて。それを追求した結果、豆大福がインターナショナルなものになったと思っています」。
販売は午前9時から。売れ切れ次第終了。予約も受け付ける。日曜日は定休。(西村)