特集/コラム
LA PETITE ROSE (プティット・ローズ)
パリ、日本人パティシエの素敵なお店
凱旋門からモンマルトルへ向かう途中のメトロの駅ヴィリエ(Villiers)の出口を出てすぐのところに、淡いピンクとブラウンでまとめられたその名もLA PETITE ROSEというお菓子のお店があり、オープンしてちょうど2年を迎えた。
このカルチエにはオフィスや住宅、商店街もあり、その上品な味とショーウィンドーから見えるチョコレートをベースにしたムースやフルーツのタルトなどの素敵なお菓子が通る人の足を止めている。もうひとつのショーケースには味に工夫を凝らした30種以上のショコラや、フルーツ風味の色彩のきれいなゼリー菓子“パット・ド・フルイ”も並んでいる。お店の前からは遠くにモンマルトルの丘を臨むことができ、店内のテーブル席や通りの椅子席でおいしいお菓子をいただきながらくつろぐこともできる。
サクサクとした感覚や口の中でふくらむまろやかなムースなどいろいろな感触を楽しんでもらいたいというだけあって舌触りが心地よく、次の一口を誘う。ほんのりと香る柑橘系の風味がさわやかなデリス・オレンジや、つややかなチョコレートにつつまれたムース、小さなクッキーがのっているアプリコットのタルト、いろいろなベリーがこぼれおちそうなまでに飾ってあるタルト・オウ・フルイ・ルージュ、日本ではまだまだ浸透していないクリームが中に挟んであるフランス焼き菓子マカロンなどを楽しむことができる。
このパティセリーは、パティシエの渡辺美幸さんによって2003年12月に始められた。兵庫県加古川出身で、フランス料理学校の名門コルドン・ブルーの関西進出をきっかけにフランスで研修を受ける機会を得、その時の印象が深く残り数年を経てお菓子作りを志し1998年に改めて来た。サンジェルマンにお店を持つジェラール・ムロー氏のもとで修行を積み、フランスに残ってお菓子を作りたいと、月日をかけて自身のお店のオープンにいたった。外国人として海外で働く際の大きなビザの壁も乗り越えた。パティシエ、店長、経営者と三役を一手にこなしかなり多忙な毎日だが、そんな気負いは感じられず気さくだ。すぐ近くにある日本にも進出している有名なフランス菓子・惣菜店をものともせず、LA PETITE ROSEのウインドーがフランス人の目を惹きつけて、そういう人たちの足を再度運ばせている。お客さんが「おいしかった」と言ってくれるのが励みになるそうだ。
お店にたつ人たちも感じがよく、パッケージのデザインなども月日とともに手が加わり、いっそう雰囲気をよくしている。これからはクロワッサン、ブリオッシュ、デーニッシュ系のいわゆるヴィエヌワズリと呼ばれる菓子パンも出したいと意欲満々。
大和なでしこパリにあり。これからがますます期待できるお店だ。
(N.Suzuki)最寄のメトロ:2番線/3番線 Villiers
11, boulevard de Courcelles Paris 75008
Tel :01 45 22 07 27 (水曜日定休