特集/コラム

【人物登場】2006-03-13

大串和賀子さん(アイリッシュ・ネットワーク・ジャパン)が語る、アイルランドの深い歴史

 3月19日(日曜日)に開催される、「第15回セント・パトリックス・デイ・パレード」に運営スタッフとして携わる、NPO団体アイリッシュ・ネットワーク・ジャパンの大串和賀子さん(右手写真左)。 「参加のきっかけはサッカーの試合でした」と振り返る大串さんに、アイルランドという国とパレードの魅力、原宿という町への思いを聞いた。

大串和賀子さん(アイリッシュ・ネットワーク・ジャパン)が語る、アイルランドの深い歴史

 

 セント・パトリックス・デイ・パレードの発祥地は、
実は本国アイルランドではなく米国ニューヨークなのだそうだ。
19世紀に多くのアイルランド人がアメリカに移住したが、
彼らはプロテスタントが大半を占めるアメリカ社会にあっても
カトリックを信仰し続けるなど、独自の文化を持ち続けていた。
  

     

 その中でも特にアイリッシュが多かったニューヨークでは、
同胞たちが自らのアイデンティティを確認しあうとともに、
現代のような便利な通信手段が存在しない環境にあって情報交換を
しあうための場がどうしても必要だった。
そこで、5世紀にアイルランドにキリスト教をもたらした
守護聖人・聖パトリックの命日である3月17日に、
ニューヨークで大々的なパレードを行うようになったのだそうだ。

   

 「セント・パトリックス・デイ・パレード東京」も、
日本滞在中ないしは永住しているアイルランド人の交歓の場として
始まったものだが、必ずしも日本人にとって馴染み深くない
アイルランド文化を、日本に紹介する場としても重要な意味を持っている。

   

 主催団体アイリッシュ・ネットワーク・ジャパンのスタッフ、
大串和賀子さんは2年前に同団体に参加。彼女がパレードを初めて
観たのはその4年前の2000年だが、アイルランドに本格的に
興味を持つようになったきっかけは、2002年日韓共催で行われた
サッカーW杯で、同国代表の戦いぶりを見たことだという。

 

 アイルランド代表の戦い方は、伝統的に泥臭いと言われる。
ブラジルやフランスのように華麗なわけではなく、特定のスター選手が
いるわけでもない。だが、11人全員が粘り強く走り続け、
何度突き放されても諦めず格上に挑んでいくスタイルは、
現横浜F・マリノスの岡田武史監督をはじめとしてファンが多い。

   

 大串さんも彼らの試合に感動し、それをきっかけにして
アイルランドの国民性にも興味を持つようになった。すると間もなく、
新天地に多くの移民が挑戦した歴史もさることながら、アイリッシュ
特有の世話好きで、他者を受け入れるオープンマインドな文化に
魅入られてしまったという。

 
 また、アイルランドはまたの名を「エメラルド・アイランド」
と呼ばれるほどに緑の多い土地だが、そうした自然に恵まれた環境に
対し、40代から50代のスタッフにはかつての日本を見るような
郷愁を覚える人も少なくないという。

   

 東京ではほかに見られないほどの自然環境を残し、
古くから新しい文化を受け入れてきた原宿という町に、
大串さんの語るアイルランドとの共通点を見出すことはさほど
難しくない。一般的には日本とさほど馴染みのない国のお祭りが、
14年もの長きにわたりこの町で受け入れられ定着したことは、
きっと原宿の持つ独特の文化も無関係ではないだろう。

   


 「3万人もの人が一日に集まるわけですから、地元の皆さんの
協力なしではこれまでも絶対にやって来れませんでした。
皆さんの表参道を、かけがえのない日常の空間を、私たちのパレードの
ために14年もの間使わせてもらっていること、そのことに対しては
感謝してもしきれない思いです」と大串さんは語ってくれた。

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