特集/コラム
80年代生まれ世代が語るKOREA-JAPAN観
左英樹さん(ONEKOREA FESTIVAL TOKYO 2006実行委員)
「ワンコリアフェスティバル東京2006」の実行委員、左英樹(チャア・ヨンス)さんは慶応大学の3年生。3万人が集まった前回フェスティバルを超える成功を、ということでプレッシャーもあるそうだが、言葉の端々からは、自分たち若い世代の力で、在日コリアンと日本人の間に新しい時代を築きたい、という強い自負が垣間見えた。
左英樹さん(写真)
元々「ワンコリアフェスティバル」自体は、80年代に在日1世や2世らによって始められたシンポジウムであり、差別の激しい時代にあって社会闘争的な意味合いの強いものだった。
しかし左さんをはじめとする、「ワンコリアフェスティバル東京2006」実行委員の在日コリアンたちは在日3世の世代。日本で生まれ、日本の文化の影響を物心つく前から受けて育った彼らには、日本という国に対しても当然ながら1世、2世とは異なる思いがある。
彼らが考えた「Love Japan,Hug Korea」という今年のコンセプトは、在日コリアンとしての自らのアイデンティティはしっかりと保ちつつも、日本と切り離しては存在しえない、彼らならではの思いを表現したものだ。
在日コリアンと日本人、ルーツから来るお互いの違いはあるがままに認め合い、双方の違いこそを尊重しあう社会、様々な価値観と文化が共生できる社会であって欲しいというのが、左さんらの世代からのメッセージだ。
だが日本に生きるごく普通の若者である彼らは、今回のフェスティバルも切実な問題意識を突きつけるようなものにはしたくないと考えている。当日の企画には「チマチョゴリ風メイド服によるメイドカフェ」といった意表をつくものが多いが、「まずは在日コリアンと日本人の若い世代が、フェイス・トゥ・フェイスで一日楽しむことが大事」と左さんは語る。そこには、自然体の場でお互いの姿を知ることの方が、深刻な討論会を何十回、何百回重ねるよりもずっと意味がある、という思いがあるようだ。
また左さんらの世代は、昨今の「韓流」ブームについても実は懐疑的だ。「冬のソナタ」に代表される恋愛ドラマは、一見日韓の垣根を急速に引き下げたように見えるが、これらのドラマの中には、在日も含めたコリアンと日本人が本当の意味で相互理解できるだけの要素は実は乏しい、と左さんらは見ている。
「韓流」ドラマを見境無くもてはやす風潮にしても、インターネット上に氾濫する差別的な書き込みにしても、現実に生きている人の実像とは関係ないところで為されている点では、特に変わるものではない。左さんが語るような、「フェイス・トゥ・フェイス」でお互いを知る場が、今後より増えることを望む。